2004年11月1日
国際文化4年 屋比久美樹
卒業研究テーマ:
「日本における難民受け入れ体制の現状と課題」
< 目次(案)>
はじめに
1.世界と日本の難民受け入れの経緯・現状
2.日本における受け入れ体制の問題点
3.今後の課題・改善策
おわりに
○日本の難民認定制度における問題点
日本の難民認定手続に対しては、アムネスティ・インターナショナル日本によれば以下のような問題点が指摘されている。
1.60日ルールの形式的な適用
日本においては、難民申請は上陸後60日以内、あるいは日本に滞在中に難民となる事由が生じた場合は、その事実を知った日から60日以内に行わなければならない(やむをえない事情があるときは除く)と法律で定められている。これをもとに、難民申請の実質的な審査をする以前に、入国後60日以内に申請をしなかったことのみを理由に不認定とする場合が多く見られる。
このいわゆる「60日ルール」は運用次第によっては真に難民性を有する人まで排除してしまう可能性があり、そのような場合は、難民条約の(難民を生命又は自由が脅威にさらされるおそれのある領域へ送還してはならないという)ノンルフ−ルマンの原則に違反する。入国後速やかに申請しなかったという事実は審査において申請者の主張の信憑性を図る一つの物差として相対化されるべきである。
2.認定過程の不透明性
日本では実質的に認定を行う者が誰であるか明確ではない。また、法務省は、難民認定・不認定の理由を公開していない。異議申出を行う時、どのような反論を行えばよいのかが分からないという問題点がある。難民認定における責任の所在を明らかにするとともに、認定・不認定の理由を開示することが求められる。
3.異議申出機関による審査の実効性
難民申請が却下された場合、不認定処分に対し異議申出をすることができるが、その異議申出を審査するのは最初の申請を審査する法務省入国管理局(担当課は異なる)であり、法務大臣の名で結果が出される。
一次審査と二次審査を同一の機関が行うことは、審査の公平性の観点から問題がある。実際、現行の難民認定制度ができた1982年以来、異議申出が認められた件数は僅かである。政府から独立した異議申出審査機関を設置し、第三者の立場から客観的な審査を行う必要がある。
4.難民申請者の処遇
日本では、難民申請者に対する生活支援制度がない。在留資格保有者なら難民申請中は在留資格の更新が認められ、就労も認められることがあるが、在留資格のない者に対しては申請により在留資格が与えられるわけではないので、申請中も合法的に就労することができないし、医療保障等の各種社会保障にも加入できない。審査は長期化する傾向にあり、その間申請者は経済的に非常に不安定な状態に置かれる。申請者の生活保障のための制度の確立が求められる。
5.難民申請者の収容
日本では申請者が収容される事例が多々ある。この収容は退去強制手続きについての法律を根拠としているが、難民認定手続きと連動してないため、難民申請者でも在留資格のない者に対しては、収容を前提とした退去強制手続きが進められる。したがって在留資格を所持していない者は、申請中であってもいつ収容されるかわからない状態にある。また、申請者の収容は長期化する傾向がある。収容は本国での迫害に加え新たな精神的及び身体的苦痛を申請者に与えることになり、申請者の心的トラウマに配慮した扱いが求められる。
○今後の研究進行予定
−参考文献・インターネットから現状と問題点について情報収集・整理する。
−難民支援団体にインタビュー、若しくはメール等でコンタクトを取って現場の声を集める。
−自分なりの問題点と改善案を練りだし、それについて掘り下げて考えていく。
<参考文献>
本間浩 『難民問題とは何か』 岩波新書 1990年
カトリック横浜教区 滞日外国人と連帯する会
『日本で暮らす外国人のための生活マニュアル』 スリーエーネットワーク 2002年
山田鐐一・黒木忠正 『わかりやすい入管法』 有斐閣 1997年
参考資料
<難民認定申請及び処理数の推移>
<異議の申出>
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昭和57年1月から平成15年12月末までの間に異議の申出において処理した数は1,373人であり,その内訳は異議の申出に理由があるとされた者(認定者)が11人,理由がないとされた者が1,108人,異議の申出を取下げた者等が254人となっている。 |
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【過去5年間における年別・処理の事由別人数】
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<難民と認定しなかった事例>
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不認定事例a】 |
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不認定事例b】 |
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不認定事例c】 |
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不認定事例d】 |
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不認定事例e】 |